ハリザッコは命の泉で生まれました。でも、いつの間にか黒く汚れた海に迷い込んでしまっていたのです。ハリザッコは思いました。もう一度あのきれいな命の泉に帰ろう。ハリザッコの旅が始まりました。


by harizakko
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喫煙列車

飲み会があったので、帰りに終電に乗った。
途中でうとうとして、刺激臭で目が覚めた。タバコのにおいだ!!
自分の座っているところから進行方向に3Mほど離れたところでタバコを吸い始めた奴がいる。どっかのじいさんだ。
『おい!それはないだろう!今じゃマナー違反どころか犯罪行為だ!』
俺は注意をしにいこうと立ち上がりかけた。
すると、何と今度は逆の方向からタバコのにおいがした。
『うそだろう!つられて吸い始めた奴がいるのか』
そちらをふりむくと50代ぐらいのおばさんだ。
こういう場合、どう注意していったらいいんだ?一人ずつ片付ける?
しかし、とうとう3人目が吸い始めた。
『はあ?もしかして喫煙車両なのか?でも、おかしいな。喫煙できる車両なんてあったかな?』
すると、いきなりとなりのじいさんが話し始めた。
「あっちの右側でタバコ吸っている人な・・あいつはすでに死んでいる」
『はあ?いきなり何言っているんですか。このじいさんは・・北斗の拳でもあるまいし』
俺はこのじいさんを見た。ぞっとした。目に光が無いのだ。暗い海の底よりさらに暗い目をしているのだ。まわりの人間を見た。このじいさんと同じ目だ。死んでいるような目をしているのだ。
「あいつは、肺気腫で去年の10月に死んだ。そして、あっちのばあさんな・・」
「あのばあさんは、咽頭ガンで死んだ」
俺は声を失った。
『すると、何、幽霊なのか?俺は幽霊に囲まれているのか?』
車両には俺以外に7人いるが、そういえば、みんな精気のない顔をしている。
いつのまにか煙が7本立ち上って、俺は副流煙でくらくらしてきた。
不思議と怖い感じはしなかった。ずーんと深い悲しみで満たされているといった方が近い。
いつの間にか、7人は俺の周りに集まってきていた。
「何を・・したいのかな?」俺はぼそっと口を開いた。
「話を聞いてもらいたい。俺達はタバコのせいで死んだ人間だ。あんたに俺達の話を聞いてもらいたいのさ」となりのじいさんが言った。
「分かった。その前に俺にタバコをくれ」
おれはタバコをもらってそれに火をつけた。
「吸いたいからじゃないからな、これを線香がわりにするんだ」
たまたま、飲み終わった缶ジュースの缶があったので、それにはさみこんだ、煙がたちのぼった。
ひとりずつ話し始めた。話し終わると涙を流してありがとうと言った。
「天国は、禁煙だから吸っちゃダメだぞ」そう言ってやったら、すっと消えてしまった。
ひとりずつ話をしては消えていった。
最後にとなりのじいさんが残った。このじいさんは肺がんで死んだということだった。
線香代わりのタバコが燃え尽きると、じいさんも消えてしまった。
車両にはタバコの香りしか残っていなかった。

車掌のアナウンスが聞こえた。それで目が覚めた。
夢だった。なんでこんな夢を見たのかな?
ブログネタを考えるのに疲れてきたのかな。
そんなことを考えながら列車から降りた。
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by harizakko | 2005-10-18 20:40 | 短編小説